新世紀エヴァンゲリオン
-TILL THE END OF WORLD.-








「エヴァンゲリオン初号機起動用意っ!!」

シンジ小父さんがそう命令を下すと周りにいた人達……多分、整備員の人達が慌ただしく作業を始めた。
そして、大葉さんが変な形をした髪飾りを持って来た。

「それではショウ君、このインターフェイスヘッドセットを着けて」

大葉から髪飾りの様なものを渡された。

「それはエヴァとのシンクロに欠かせないものなの」

なんのこっちゃ。これがエヴァを動かすのに必要なものなのか?

「取りあえず、シンクロと操縦システムに関して簡単に説明しておくわ。
貴方をエントリープラグ、つまりコックピットに入れた後にすぐエヴァにプラグを挿入します。
そして特殊な技術でエヴァと貴方の神経を繋ぐわ。
この時に何か違和感がある様だったらすぐに言って欲しいわ。
それで、エヴァを動かす時は自分の身体を動かす感じでやって」

「つまり俺とエヴァの神経を繋ぐ事で、俺が思った通りに動くって事ですか」

「そうよ。気を付けて欲しいのは動く際に生じるタイムラグ。
エヴァとシンクロすると言っても完全に貴方の身体と一体になるわけではないの。
私たちは一体化の割合をシンクロ率という数字で表していて、その大きさが動き易さの目安になるわ。
シンクロ率100%で貴方の思い通りに動くわ。
シンクロ率50%ではそれに若干のタイムラグが生じるわ。
元々イメージする事によって動かすシンクロシステムにも致命的な欠点があるの。
それはエヴァが受けたダメージが神経接続を通してパイロットに返ってくるという事。
それもシンクロ率が高ければ高いほど返ってくるダメージが大きくなるわ、気を付けて」

「はい」

「ではこちらに来て。速やかにエントリーして中で待機していて」

「分かりました」




『冷却終了、ケージ内全てドッキング位置』

『8thチルドレン、エントリープラグ内コックピット位置に着きました』

『了解、エントリープラグ挿入』

円筒状のエントリープラグのシートに座ってすぐグルン、と回転する様な錯覚に捕らわれた。
いきなりだったからそこらの計器に頭ぶつけたぞこんちくしょう。

『プラグ固定完了、第一次接続開始』

『L.C.L.注水』

黄色い液体がどんどん湧き上がって来る。
俺は機械鎧(オートメイル)を付けているから沈む。
泳げるかもしれないけど、沈む。絶対沈む。

「これって新手の虐めですか?」

『ごめんなさい。説明を忘れていたわ。
それはL.C.L.と言って、直接肺に取り込む事で直接酸素を供給してくれるわ。
だから安心してそのまま沈んで』

ゆっくりと息を吐いて、またゆっくりと空気を吸うようにL.C.L.とやらを取り込む。

「……血の味がする」

お世辞にも良い味とは言えない。
人って生き物は同種の手や足、つまりはパーツだけを見たり血を見たりすると生理的嫌悪を抱く。
これらは皆『恐怖の原体験』と言うらしい。
なんでも人間とか猿、霊長類は脳の容量が他の生物より大きい為に種の自爆停止プログラムが組まれている、らしい。
だから、俺が血の匂いで嫌悪を示すのも当然の事だ、納得。

……この期に及んで現実逃避してないか、俺?

『主電源接続、全回路動力伝達、起動スタート』

プラグ内に一瞬光が爆ぜ、様々な光景……と言うか中には訳の分からない模様やらが駆け抜けて行く。
長時間見ていると目が悪くなりそうだ。

A10神経接続異常なし』

『初期コンタクト全て問題なし』

『エヴァ初号機、双方向回線開きます』

さらに一瞬プラグ内に光が爆ぜる。
するとケージ……だったか、エヴァが格納されている所がプラグ内の全面に表示されていた。
いや、表示されている、と言うのとはちょっと違う。
これはエヴァの視点だ。
足下で整備員の人が何かしている。
さらに様々な人達が忙しなく動いている。
エヴァって、こんな風にものを見ているのか。
それになんだか自分自身が大きくなった感じがする。
これがシンクロか。

『シンクロ率58.9±0.2%』

『すごい……初めてのシンクロで60%近い数字を出すだなんて……』

大葉さんの驚きと困惑の混じった声が聞こえた。
よく見ると俺の右斜め前方に小さなモニターが表示されていた。
そこには加持さん、大葉さん、カエデ、それに司令塔だろうか、
その上にはアスカ姉さんとシンジ小父さんそれと……カオル兄さんがいた。
何故アスカ姉さんとカオル兄さんの呼び方が『小母さん・小父さん』じゃないかは秘密だ。

『エヴァ初号機発進準備』

『第1ロックボルト解除』

『解除確認アンビリカルブリッジ移動』

『第1第2拘束具除去』

『1番から15番までの安全装置を解除』

『内部緊急用バッテリー異常なし』

N2エンジン異常なし』

『エヴァ初号機射出口へ』

『24番ゲートスタンバイ』

『進路クリア、オールグリーン』

『発信準備完了』




Kaede Side

「了解!」

ミキさんが振り返って後ろの高い所にいるお父さんに向かって言った。

「碇司令、かまいませんね?」

これでお父さんが肯定すればショウ君はもう戻れない。
本当は嫌。
でも、でもショウ君は決めちゃったから。
ショウ君は一度決めた事を止めないから。

『だれかがやらなきゃ、皆死ぬんだ』

だから、私はここで精一杯応援しよう。それが今の私に出来る事だから。

「……使徒を倒さなければ、地球上の生物に未来はなくなる。
―――勇敢な戦士に敬礼を」

お父さんがショウ君に向かって敬礼する。
それに合わせてこの広い所……発令所にいた人みんな敬礼をした。
私も慌てて敬礼をするとモニターの向こうのショウ君が、

『カエデ、似合わないから止めとけ』

って言った。
う゛ー、ショウ君の意地悪ー。
ほら、みんなクスクス笑ってるよぉ。

「ショウ君、良いわね」

『はい、いつでもどうぞ』

ショウ君は上の方を見ながらそう言った。

「ショウ君、発進する時Gが掛かるから気を付けて」

『はい』

「エヴァンゲリオン初号機発進!!」

バシュッ!

ミキさんの声とほぼ同時にショウ君を乗せたエヴァが地上に向けて打ち出された。
大きいモニターにはGに耐えるショウ君が映っている。

ガァンッ!

気付いた時には既にエヴァは地上に出ていた。
そして私はとてつもない不安感に駆られた。

「最終安全装置解除! エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!!」

エヴァの両肩を拘束していたパーツから解放されて前に姿勢を傾ける初号機。

死なないでね、ショウ君……。
もしもショウ君が負けて死んじゃったら……。

そこまで考えて思考を止めた。
そんな事はない、ショウ君は強いんだから。
だから、帰って来てねショウ君。





第弐話:第一次直上決戦
EPISODE 2:FIRST BATTLE!



Shou Side

目の前には使徒がいて、こちらの様子を窺っている様に全く動いていない。
そもそも何故、目の前に使徒がいるかと言うと。
簡単に言えば、待ち伏せされていた。
どう言う風な原理でエヴァが出されるかを知ったのかは分からないが、
ともかく待ち伏せされていた。

『ショウ君!』

「はい」

『手元の"LS"って書いてあるボタンを押して』

俺が手元のコンパネにあった『LS』と書かれたボタンを押すと、ヴィーンと変な音がした。
一体何のボタンだ今の?

『ショウ君、まずは腕を動かしてみて』

動かし方は確か自分の感覚で考える事だったな……。

右腕を曲げ、手を開いたり閉じたりする事を自分の感覚で考えてみた。
するとエヴァの右腕が肘を曲げ、手を開いたり閉じたりと俺の思った通りに動いた。
大体タイムラグは0.5秒あるかないか。これが大葉さんが言っていたシンクロ……。

「ミキさん、何か武器はありませんか?」

モニターからは『やった!』とか『動いた!』等の歓声が上がっていたが別段気にしなかった。

「出来れば剣の様な武器を下さい」

最高なのは刀だが。

『リエ、MES(マゴロク・エクスターミネート・ソード)、出してあげて』

『ええ。ショウ君、これから貴方の左側に武器を送るわ。受け取って』

するとすぐに何か、紫色のものがビルを立てに割る様にして出ていた。
それをすぐに手に取る。

「これは……」

見た目的にも鞘に入った日本刀、そんな感じだ。

『正式名称、マゴロク・エクスターミネート・ソード。日本刀型斬撃武器よ』

まさか本当に日本刀型の武器があるとは。あってもナイフやそこらだと思っていたがこれがあれば充分だ。
奴の攻撃は、手の平からの槍と目からの光線。
槍は確か出す直前に肘が輝く。それで避わしながら1撃を入れる。
光線はかなりのスピードで来るから勘で避ける。それで……。

ふぅ、と一息吐いて俺は居合いの構えをイメージする。
そして、突風が起こるイメージ。
目の前に使徒を見据えて、俺は静かに呟いた。

「如月流、"突風"」

MESとか言ったか……その刃から放たれた衝撃波は使徒を吹っ飛ばした。大体100〜200mくらいだ。
『おおっ!』と歓声が上がるが間髪入れず再び居合いの構えをエヴァに取らせる。

「如月流、"烈風"っ!」

『突風』が防の風ならば『烈風』は攻の風だ。
奴に攻撃をさせない。
それは戦いの定石でもあるし、俺の戦闘スタイルそのものだ。
『烈風』……A.T.フィールドによって周りの空気を圧縮し、解放する。
それによって真空が出来、その真空状態の場所に他の空気が入る。
さらにそれによって起こった風を刃に乗せて放つ。
『突風』はそれをわざわざ面を取るように放ち、『烈風』は狭い範囲、縦に放つ事で攻撃する。
まぁ、よく言うあれだ、鎌鼬。
あれを人工的に起こして敵にぶつける技なのだ、『烈風』は。
突風はそれと逆に面で放つから基本的に崩し技だ。

良し、当たる!

体勢を崩した状態から『烈風』を避けるのは至難の業。
これが決まれば俺が圧倒的優位に立てる。
しかし……。

バキィーンッ!

光の壁、A.T.フィールド。
掛かった!

それぐらい、最初から見抜いていた。
同じA.T.フィールドを使える俺だってこんな状況になればフィールドで防御をせざるを得ない。

そして……。

『何なのあの煙は!?』

使徒を隠す様に……否、使徒の視界を奪う様に濛々と煙が立っている。
如月流、『霧煙海』。
極小のA.T.フィールドを空気中に放つ技。
この技は霧の元がなければ出来ない技だが、1度発動すれば敵の視界を完全に奪う。
『突風』との連携が主に使われる技だ。

「だあぁぁぁあぁっ!!!」

モニターの向こうから何やら疑惑の声やら歓声やらが聞こえて来るが無視。
そのまま手に持った刀を振り下ろす。

バキィンッ!

突然『霧煙海』の中から出てきた使徒の脚の内の1本が(初号機)の手から刀を叩き落とした。

「何っ!?」

そのまま『霧煙海』から飛び出して来た使徒の脚4本が両腕両脚を地に押し付け、身動きが取れなくなった。

「くそっ!」

そのままフィールドを展開して使徒を吹き飛ばそうとした瞬間、光が俺の視界を奪い、さらに意識も奪われた。




Kaede Side

「ショウ君!」

ショウ君の乗るエヴァ初号機は使徒の脚に両腕両足を封じられ、そのまま槍で頭を貫かれた。
ゆっくりと初号機の体から色が抜け落ち、元の灰色に戻る。
それと同じ様に私は自分の体から力が抜けて行くのを抑えられなかった。

「頭部破損、損害不明!」

「制御神経断線! 第1信号第2信号共に反応なし!」

「シンクログラフ反転、パルス逆流!」

「回路断線、せき止めて!」

「ダメです、全信号拒絶、制御不能!」

「LS装甲ダウン! オートイジェクション作動不能!」

ほとんどが訳の分からない専門用語。
でも、なんとなくその意味は分かった。

それすなわち、ショウ君が負けた、と言う事。

「ショウ君は!?」

「プラグ内モニター不能、脳波心音共に表示不能、パイロット生死不明!」

生死不明……それは私にとって絶望的な響きだった。
ショウ君はどうなったの?
ねぇ、どうなったの?
なんで誰も『ショウ君が生きてる』って言ってくれないの?
どうして、どうして?
私の中で『何か』がガラガラと音を立てて崩壊した。




Shou Side

ここは……どこだ……?

俺は……死んだのか……?

負けたのか、使徒に……。

カエデとの約束、守れなかったな……。

俺が約束破るとすぐ泣き出すし、皆に迷惑が掛からなきゃ良いけど……。

……。

―――まだ、死にたくない……。

まだ、死ねないんだ……。

『何故、まだ死ねないの……?』

俺が死んだら、あいつ……カエデが悲しむ……。

あいつの泣き顔は見たくないんだ……。

『……』

あいつは、俺が笑わない分笑って、笑顔でなくちゃいけないんだ……。

俺はあの時、右腕と母さんを失った時、笑う事を止めたから……。

『なら、少し休んでいなさい』

……?

『私が貴方とその子を守ってあげる。
何故なら私は―――
私は貴方の……だから……』

……!!!




糸が切れた様にその場に崩れるカエデ。
必死にノイズが走るモニターを回復させようとするオペレータ。
事態は間違いなく最悪の方向に向かっていた。
と、その時地に串刺しにされた初号機がピクリと震えた。
それをシンジ・アスカ・カオル、そしてカエデは見逃さなかった。

「やっと起きたね?」

「本当、息子がやられてんのに寝てる親がどこにいんのよ」

カオルとアスカは結構好き勝手言っている。
シンジはペタンと発令所の床に座り込んだカエデを見て、一言呟いた。

「彼は彼女が護る、だから平気だ」

そう、それはまるで自分に言い聞かせるように。

うるぉぉぉっん!!!

咆吼。

初号機の咆吼は大気を振るわせ、地下の発令所にまで響いていた。

「エヴァ初号機再起動っ!」

「自ら顎部ジョイントを引きちぎりましたっ!」

「初号機、再びレーザーシフト装甲展開っ!!」

「まさか……」

「暴走、しているの? このタイミングで……」

地に縫いつけられたまま吼える初号機を見て、カエデは呟いた。

「シオリ……小母さん……?」




Eva-01 Side

『私』は右目に刺さっている使徒の槍を掴み、引き抜いた。
そのまま右足で使徒を蹴り飛ばし、無理矢理距離を取らせる。
エントリープラグの中にはショウが気絶している。
なるべく早く終わらせたい。

体勢を立て直した使徒の目から光が放たれる。
だが、『私』はそれをA.T.フィールドで弾き返す。

Absolute Terror Field.
絶対恐怖領域。
心の壁、心の光。
『私』の心はその程度では揺らがない。
つまり―――

―――つまり、貴方の攻撃は『私』には届かない。
それが意味するのは『貴方の敗北』。

光をA.T.フィールドで防いだ『私』はそのまま使徒に突撃した。
使徒はそれに恐怖し、強力なA.T.フィールドを展開した。
肉眼でもはっきりと確認出来る程のものを。

『私』は自らのA.T.フィールドを右腕に集中させた。
それは平面の中心を頂点とした3角錐として変化し、使徒のA.T.フィールドを易々と貫いた。
無論の事、そのまま終わる訳がない。
A.T.フィールドを貫いた後も光の刃を更に奥へ進ませ、使徒の顔面を貫いた。
悲鳴を上げる使徒。

でも、『私』はそこで容赦する程お人好しではない。
そのまま使徒の左腕を右手で掴んで、使徒の体ごと翻して地に叩き付けた。
これで先程と立場が逆転した。
真っ赤に輝くコアに向かってA.T.フィールドの刃を叩き付ける。
1回、2回、3回。
回数を重ねる度に亀裂が入るコア。
そして、『私』は止めとしてA.T.フィールドで使徒ごと押し潰した。
目の前に、光が満ちた。




Shinji Side

「終わったね」

「ええ、これで11年前の仇は取れたわよね?」

果たしてそうだろうか。
第拾九使徒バグエル。
虫の名を与えられ、なんともいい加減な名前を付けられた使徒は『彼女』によって処理された。
そして……。

「本当の戦いは、これからだ」

そう呟いて僕は作戦終了の命令を発令所に飛ばした。






後書き


多分これで第二話改訂終了。
出来れば6月までに改訂作業を終わらせて第八話を書きたい所。
カエデって実は結構まともなキャラで、とある事情で猫語を使わせてますが頭はよろしいです、多分。






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