風の果てに








―――原初の民へ。



世界は三度の滅びを経て再誕する。
故に我らは三度目の裁きで滅びなければならない。

しかし、我らが再誕の中枢となれば話は別だ。
それすなわち我らの再誕、兼ねてはリリンの再構成を意味する。

なればこそ、我らは手に入れるのだ。神の力を。

その剣の名は「エヴァンゲリオン」。
福音を冠する至高の剣なり。






2001年 6月7日
碇ユイの"裏・死海文書"解読文より抜粋。


第一話 元始




『碇シンジ14歳。誕生日は6月6日。
小学校、中学校共に成績は良好。
特に演算能力に優れており、中学一年期末テストでは学年トップの成績だった。
逆に人間関係は劣悪で、性格は内向的。特に預かり先の小父夫妻との関係が悪い。』

「厄介な子が選出されたわねぇ……」

報告書を読んで葛城ミサトは溜息を吐いた。
二日後に迎えに行く手筈になっている三番目の子供。
その内容はどう考えても戦闘には向いていない。
人間関係を築けないのは部隊として致命的だ。
最低でも三機編成が望ましいが、先に選出された二人とウマが合うとは思えなかった。

「レイはともかくアスカは駄目よねぇ、こういうタイプ」

直情的な彼女が紙面だけでも彼を受け付けないのが手に取るようにわかる。
つまり、それほど相性が悪いのだ。

「ねぇリツコ。別の候補生から選べなかったの?」

「それはマルドゥック機関に直接言って頂戴。
私達は選出されたパイロットでしかエヴァを動かせないわ。
権限で徴兵しても、それこそ本人が嫌がって戦闘中に逃亡したりとかされたら悲惨よ」

「五分しか動けないんだから逃げようもない……けど、錯乱した人間は何するかわからないもんね」

「そういう事。
だから一度でも良いからエヴァに乗せて適性検査、および本人の承諾を得ないといけないわ」

「メンドすぎるわ、本当」

「仕方ないでしょ。
レイやアスカはともかく、いきなり呼ばれてそのまま兵士だなんて笑えないわ」

親友、赤木リツコの言う事はもっともだった。
一番目の少女レイ、二番目の少女アスカともども幼少時から訓練を受けている。
つまり、純粋な錬度としては二人の方が上と言う事だ。
しかしその錬度すら覆してしまうスペックを出せるのがエヴァンゲリオン。
パイロットと機体の相性次第では数より質が戦局を左右するだろう。

「……なんかもう、今から気が重いんだけど」

「諦めなさいな、葛城作戦部長さん。
レイやアスカ以上のシンクロ率が出せれば、戦闘に出なくても乗ってるだけで充分だわ」

「二人と比較したデータを取って二人の能力を引き上げるって事?
でもそんな上手く行くのかしらね。レイなんて暴走して怪我してるじゃない。
下手したら彼も乗せた途端に暴走するかもしれないわ」




後書き

カヲルはしばらくシンジと接触しない方向で。
風当たり厳しいねぇ。




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