夏に咲く紅の花/プロローグ三






泣かないで。
あなたの涙はとても悲しいから。

泣かないで。
あなたにはまだ護るべきものがあるのだから。

お願いです。
私を糧に大切なものを護って下さい。

お願いです。
私の事を忘れないで下さい。

さようなら。
次遇う時は美しい花畑の中で。




あなたはとても輝いていた。
私にはそれがとても眩しかった。

あなたはとても輝いていた。
私にとって希望だった。

私はとても歪だった。
あなたはそれを許容してくれた。

私はとても歪だった。
だから真っ直ぐなあなたに感謝しよう。

ありがとう。
私は前を見て歩き出す。




彼女は運命を知っていた。
だから逆らわなかった。

彼女は運命を知っていた。
だから彼女は泣いていた。

彼女はいつも笑っていた。
それが彼女のするべき事だったから。

彼女はいつも笑っていた。
運命はそれを嘲笑う。

こんにちは。
彼女の笑みは日だまりの様。




これが何か知っている?
人を殺す道具とでも言うつもり?

これが何か知っている?
そもそもこれが見えてるの?

誰がやったか知っている?
『何をしたか』知ってるの?

誰がやったか知っている?
私を襲って殺そうとした人!

こんばんわ。
闇夜は背中に気を付けなさい。




助けて下さい。
闇から迫る狂気から。

助けて下さい。
『死』と言う恐怖から。

あなたは精一杯戦った。
あなたの傷を私が癒す。

あなたは精一杯戦った。
そして『明日』を勝ち取った。

おはよう。
私の隣にあなたがいる、それがあるべき日常。




彼女は強かった。
私が憧れ、目標とした人物だった。

彼女は優しかった。
まるで水の様に透き通っていて、彼女は輝いていた。

彼女はとても嘆いていた。
悲劇は再び起こると。

彼女は一言こう言った。
闇を払う光の役目を私が担いましょう、と。

さぁ行こう。
彼女が導いた結末を見届ける為に。




綺麗な星空を見上げた。
光瞬く星の海に、私は夢を見た。

雲一つない蒼穹を見上げた。
果てのない青空を見るのが好きだった。

闇夜に煌めく刃を見た。
私は自らの身が紅に染まるのを知っていた。






夏に咲くの花