・6/25 (日)
「はい、祐理ねぇ」 「あぁ、ありがとう」 そろそろ中間テストが近い。 今年受験生の祐理ねぇもそれなりに気合を入れて頑張っている。 差し入れに以前、コーヒーを炒れて行った事があったのだけれど、祐理ねぇ曰く、 『あれは泥水だ』 とか。 そう言えば苦いの嫌いだったな、祐理ねぇ。 それからと言うものの、祐理ねぇへの差し入れはカフェオレだ。 まぁ、適当にコーヒー炒れて牛乳混ぜただけだけど、祐理ねぇ的にはかなり美味しいらしい。 「……翔は本当にこういうのが上手だな」 「そっか? 結構適当にやってるんだけど」 「だけど上手だ。いつも小母様の料理を見て、覚えたのか?」 「うん。でも母さんの方が美味しいだろ?」 「あぁ。けど、私的には翔が炒れたのが一番だ」 微笑みながら言う祐理ねぇ。 ……なんか恥ずかしいな。 「さて、翔から元気を分けてもらったから後半頑張るか」 「ん、じゃあ俺は下行くよ」 「あぁ。……翔」 「ん?」 「……いや、なんでもない」 「? じゃ、また後で」 「あぁ、また後で」 あの妙な間と呼びかけはなんだったんだろう? ま、いっか。 下でまた楓とレアが暴れてるみたいだし、止めに行かないとな。 ・6/18 (日) 「ねぇ」 「なんだ、凄腕ハンター」 いつものように、酒場で酔い潰れているとあいつ……カレンが話しかけてきた。 どうせ碌でもない話だろう。適当に聞き流す事にした。 「あのさ、ふと思ったんだけどさ」 「あぁ」 「大名って美味しいのかな」 「あぁ?」 「今日ね、適当に火炎弾を撃ち込んでみた訳よ」 「あぁ」 「そしたらね、怯みまくるのよ。なんか美味しいそうな焼け色になってるし。良い匂いもしたし」 「それで?」 「いや、そのまま捕獲して帰ってきたんだけど、討伐した場合って勝手に食べちゃって良いのかな、って」 「美味そうだったのか?」 「うん、結構大きかったから十五人前くらいありそうだったわよ。 狩りした後ってお腹減るし、食べても良いよね?」 「……ギルドの看板娘にでも聞いてこい」 「ん、聞いてくる」 そのまま看板娘の所に言って話始めるカレン。 まぁ、確かに大名は美味そうだな。ザザミソが食えるんだ。身も食えるだろう。 ……今度食いに行くか、密林まで。 ・6/11 (日) 「ただいまー」 「お帰りなさい、翔。お布団入れるのお願いね」 「あ、今日は母さんパートだっけ? わかった、入れておく」 「じゃあ、行ってきます」 「うぃ、行ってらっしゃい」 ばたん、と玄関口が閉まると、俺は自室に鞄を置いて、早速布団を入れにかかった。 今のうちは大世帯だ。 母さん、父さん、俺、鈴、祐理ねぇ、楓、レア。 明らか男女比が偏ってるが、そこはもう気にしない事にした。 ベランダに一番近いのが俺の部屋。 次に鈴で、階段を挟んで祐理ねぇ、楓、レア。 一階に母さんと父さん兼用の部屋。 祐理ねぇと楓は隣(=如月家)に帰ればきちんと自室があるんだけど、無駄に広いうちに住み込む形になっている。 と言うか、その家具もほとんど父さんが費用を出している……仕事は道楽らしい。 まずは、一番近い俺の部屋から布団を入れて行く。 順調に布団を入れて行くのだが、階段は危ないのでできるだけ下を見ながらだ。 ……ふぅ、終わった。 夕飯まで寝るかな……。 「うにゃーん……」 「んぅ……」 「ちょっと待てお前ら」 自室に行くと人のベッドの上で寝ている義妹と幼馴染二号が。 ……久しぶりだから忘れてた。 こいつら、干したての布団で寝るのが大好きなんだった……! 「仕方ない、ソファで寝るか……」 まぁ、起こすのも可愛そうだしな。 その後、事情を全く知らないレアが五月蝿かった。 ・6/8 (木) 「おい」 「何よ?」 「……そのカップに浮かんでる砂糖はなんだ」 「見りゃわかるでしょ。角砂糖」 「いや、俺が言いたいのはその物の数だ。何個入れた?」 「あー、んー……八個?」 「入れ過ぎだッ!」 「五月蝿いわねぇ」 そのまま大量の砂糖が入った中身を掻き混ぜて飲むレア。 ……くそぅ、今の内に太るぞ。 「残念、頭使ってれば糖分は消費されるのよ。 まぁ、私と翔の思考能力の差を考えれば砂糖の数が違うのも道理よね」 「それ以前に、そんなに入れたら胸焼けするだろうが!」 「だーかーらー、そんだけ頭使えば良いのよ? 使わないと太るのよ? 私は使ってる、かなり使ってる、だからいっぱい砂糖入れる。OK?」 「"OK?"じぇねぇ! お前がきてからうちの角砂糖の消費量が四倍だ、四倍! お前一人でうちの家族プラス如月姉妹分×4だぞ!? そろそろペース落とせ!」 「嫌よ。砂糖紅茶美味しいもん」 「結局甘党なだけか!?」 ・補足 例によってTTEOWパラレル。 今回は、本編でも未登場のキャラ、レアと翔の掛け合いです。 いや本当、頭使えば相応に糖分は消費されるんですよ? でもレアのは入れすぎですな(ぉ ・6/4 (日) ♪♪♪〜♪〜♪♪〜 「ん?」 家に帰ると、ヴァイオリンの旋律がリビングから聞こえてくる。 ヴァイオリン……祐理ねぇか? 「祐理ねぇ」 「あぁ、翔か。お帰り」 そう言って再びヴァイオリンを弾き始める祐理ねぇ。 ……久しぶりだな、祐理ねぇがちゃんとヴァイオリン弾いてるの。 「何の曲?」 「さぁ、私にはわからない。母さんが昔よく聞かせてくれていた曲だ。 楽譜もあるから、たまにしか弾かない私でも少しは弾ける」 ヴァイオリンを弾きながら祐理ねぇが答えた。 その楽譜を後ろから見てみた。これは……。 「他の楽器と一緒に弾く曲なんだ、これ」 「あぁ。けど何の楽器かはよくわからない。翔はわかるか?」 「うん。これはピアノとヴァイオリン、ヴィオラで弾くんだ。 ……俺も弾こうかな」 リビングの隅にあるグランドピアノは母さんが昔使っていたものだ。 けど、今は俺が使ってる。 椅子に座って、鍵盤を叩く。うん、好調。 伴奏だからまぁ、なんとかなるだろう。 ♪〜♪♪♪〜♪♪〜 ピアノとヴァイオリンの旋律がリビングを満たす。 うちは内面防音だから外に音は多分漏れてない。 俺も祐理ねぇも、楓が乱入してくるまで演奏を楽しんだ。 |